2024年8月20日
2016年2月に公表されたリース会計基準ASC 842は2022年1月から多くの非上場企業で適用が必要となりましたが、その中で簡便措置を採用した企業もあり、新規または更新されたリースに対して当該基準を適用する際には再検討が必要となります。
2022年に弊所が配信いたしましたリース会計のニュースレターでは、会計処理を中心に説明いたしましたが、今回のニュースレターでは新たにリース会計の適用を再検討する場合に必要となる手順を紹介いたします。
1. ASC 842のスコープの理解
ASC 842では、ほとんどのリース取引に対して使用権資産(Right of use asset、以下、「ROU資産」)とリース負債を貸借対照表で認識することが必要となります。「リース取引」とは、特定物件の所有者である貸手が、当該物件の借手に対し、合意された期間にわたりこれを使用し、収益を得る権利を与え、借手は合意された使用料を貸手に支払う取引のことです。契約書に「リース」と記載が無くても、上記の定義を満たす契約は、ASC 842基準が適用されるリース取引として取り扱われます。
2. 既存リースの特定
まずは保有するすべてのリース契約をまとめ、以下の点に注意して契約を整理します:
契約書:契約条件の概要を記した正式な書面が存在すること。
主要条件:支払いスケジュール、リース期間、更新オプション、終了条項が記載されていること。
3. 契約内容の精査
各契約にASC 842が適用されるかどうかを判断します。同基準に沿って契約内容がリース取引として定義可能かどうか、以下の点に注意して精査します:
使用収益の権利:資産を自ら使用して、利益・利便が得られるか。
期間と支払い:リース期間、支払条件の確認。
4. ROU資産とリース負債の計算
リースを特定したら、ROU資産とリース負債を計算します。
割引率の決定:割引率が契約で定義されている場合はそちらを使用し、無ければ自社の追加借入利子率、またはリスクフリーレートを使用します。
リース料の現在価値:将来における支払い額の総額を現在価値で計算します。加算購入オプションを行使する可能性があれば、そちらも含めます。
リース負債の計算:将来における支払額の現在価値を加算してリース負債額を決定します。
ROU資産の計算:ROU資産は、開始日以前または開始日に支払ったリース料、初期費用、および受け取ったインセンティブをリース負債に加減して計算したものとなります。
5. 短期リースの簡便措置の検討
ASC 842の下では、短期リースに対してROU資産とリース負債を認識しない選択肢があります。リース期間が12ヶ月以下で購入オプションを使用する可能性が低い場合、短期リースとして取り扱うことが出来ます。この選択を行う場合、リース期間にわたり定額法で費用を認識します。この選択は資産のクラスごとの会計方針として適用し、そのクラス内の全てのリースに一貫した会計処理を行います。
6. プロセスの文書化
内部統制の一環として、会計上の決定事項や計算方法を詳細に文書化します。
7. 決算用ワークペーパーの作成
リース会計で適切な会計処理を行うため、以下の点に注意して月次決算に使用するワークペーパーを作成します。
ROU資産とリース負債の残高確認:計算上の残高と貸借対照表の残高を比較する。
償却費と利息費用の確認:ROU資産の償却とリース負債の利息費用が正しく計算され、損益計算書に計上されている事を確認する。
リース変更に応じた調整:リースの変更、終了、更新による調整を行う。
差異の記述:計算上の金額と帳簿に差異がある場合は、詳細を記録する。
最後に
リース会計基準ASC 842の適用にあたっては、基準の範囲を理解し、契約内容を精査し、必要な計算を行い、社内プロセスを定める事で効果的な活用を期待することができます。ASC 842の適用に関してサポートが必要な場合は、お気軽に弊社までご相談ください。
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