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仕事を好きになる



先月、たまたまつけたテレビジャパンで、ゴミ収集員の密着取材をしているのを見かけました。横浜でゴミ収集員をされている、岳裕介さんという方でした。「俺はゴミを夢だと思っている。」と冒頭で彼は堂々と話していました。私の幼馴染もゴミ収集員をしていますが、彼に仕事の面白さ、やりがいを聞くことは、何となく避けていて、私はそこに後ろめたさを感じていました。これは見ない訳にはいかないと思い、柄にもなく真面目なテレビ番組に見入りました。


トラックから乗り降りすること一日400回、ゴミ収集の仕事は身体を酷使する上、毎日同じことの繰り返しです。深夜に街が寝ているうちに仕事をすることが多く、直接人から感謝をされる機会がほとんどありません。その上子供から「くせーなー」と傘で車を突かれたこともあったり、大学生の集団から「何だよ、くせーな、こんな所通るなよ。」となじられた時には、岳さん自身「周りから見たら臭い仕事なんだな。」「要は仕事の底辺なんだな。」と、自分の仕事に誇りを持てず、ただ給料を貰うためだけに会社に行き仕事をする、抜け殻のような社員になってしまったそうです。


そんな単調な日々が一年ほど続いたある夏の日、ゴミ箱に近づくと、その横に、お菓子と冷たい飲み物が置いてあり、「いつもありがとうございます。ほんの気持ちですが、召し上がってください。」という手紙が添えてあったそうです。その場から動くことが出来なくなった岳さんは 「自分を必要としてくれる人がいる。この仕事を卑下し、見下していたのは自分だ。逃げずに、自分自身を変えたい。変えていかないと周りも変わらないし、恥ずかしくないことをしなきゃいけない。」 そう気づいたそうです。それから、彼は収集員の仕事の範疇ではない散らかった小さなゴミを納得するまでかき集めたり、仕事が終わった後も毎日残って臭いが沁みついた車を磨き上げたり、分別の出来ていないゴミを出す人に直接会いに行き「街を綺麗にする協力をしてほしい。」とお願いをしたりと、朝みんなが起きた時に街が綺麗になっていること、そしてみんながこの街で気持ちよく生活出来るようになることが自分の仕事の意義だと気づき、日々小さな努力を重ねていきます。それでも心が折れそうになった時は何も考えられなくなるまでゴミ箱を抱えて走り、中途半端ではなくとことんやり切ったそうです。そんなことをしているうちに、高校中退の元不良が、今は日本で最もゴミが多い街で50人のチームを束ねるリーダーとして活躍し、遂にはテレビ取材を受けるまでに至ったのでした。


世の中には、プロ野球選手やお医者さんのように、人々を驚嘆させたり、直接お客様からありがとう、と感謝される仕事があります。逆に、ゴミ収集員のように、1000回仕事をして、1回感謝されるかどうか、という仕事もあります。全ての仕事には意義がありますが、現実には人気のある職業とそうでない職業は存在し、身体能力や勉学の能力などで、就ける職業とそうでない職業があります。プロ野球のように、能力の高い選手が更に鍛錬を積んで見せるプレイは人の心を動かします。しかし、例え能力が高くない人であっても、あらゆる職業において本気で仕事に取り組む人は見る人の心を動かすものです。私が岳さんを凄いと思ったのは、一年でたった一回「いつもありがとうございます。」と感謝されたことを心に刻み込み、自分の街を綺麗にする、その意義のために全力を尽くし続けていることです。自分の持ち場以上の仕事をこなし、誰も気づかないかもしれない中、ただ自分が住む街を綺麗にし、自分を蔑むかも知れない人たちまで気持ち良く過ごせるようにしたい、その志のために全力を尽くす、その姿に感銘を受けました。


多くの皆さんは既に仕事が好きかも知れませんが、実は私も岳さんのように、元々仕事が面白いとは思っていませんでした。 そんな私や岳さんが、仕事を好きになるまで行ったことに、3つの共通点を見つけました。まず初めに、仕事の意義を理解することでした。自分の仕事が、どのように社会の役に立つのか、それが理解出来れば、自分の仕事に誇りが持てるようになります。次に、自分の仕事が上手く行った時に、周りの人々が喜ぶ顔を想像することでした。弊社はWow! your clientと言いますが、大きなサープライズでなくても、どうやれば少しでも相手の予想を超えて、少しでも多く相手に喜んでもらえないものか、想像し、実行してみることだと思います。その時の、相手の表情まで想像出来れば、きっとやってやろう、という気になるのでは無いでしょうか。最後に、何より本気で仕事に取り組むことでした。それこそ働いている時は集中しているあまり、周りの人がこの人は大丈夫か、と思うくらい本気で働いてみることです。適当なやっつけ仕事で仕事が面白くなることは絶対にありません。とにかく仕事をしている時は、本気で働いてみることだと思います。


仕事が好きになれば、更に仕事に集中することができ、仕事自体が段々と苦では無く、楽しくなっていきます。そして誰かから感謝をされるようなことがあれば、素直に喜び、そんな人が一人でも多く増えるように努力をしていく訳です。お客様のファンが増え、社内でファンが増えれば、きっと仕事はさらに面白くなるはずです。


経営者の仕事は、仕事の意義、お客様の喜び、仕事の面白さを伝え、常に仕事に本気で取り組み続けることだと思います。私が妥協した瞬間、全社員の気が抜けてしまう訳ですから、そういう意味では一切気を抜くことの出来ない職業だと思います。しかし、私が自分の仕事を好きになり、本気で取り組めば取り組むほど、少しずつ会社が良くなり、社員の士気が高まり、成長していくのを感じます。経営者の責任が嫌で嫌で押しつぶされそうになった時期もありましたが、本当に素晴らしい職業に就けたものだと今は思います。そして今は岳さんと同じように、私もこの仕事に誇りを持ち、この仕事が好きだと、堂々と言えるようになりました。私は社長ですが、社員も一人一人、違う持ち場があります。社員一人一人全員が、自らの仕事に誇りを持ち、この仕事が好きだと言えるよう、これからも仕事の意義、お客様の喜び、仕事の面白さを社員全員に伝え続けたいと思います。

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