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リーダーの根底にあるもの


米国軍隊には、Medal of Honorと言う名誉勲章があります。受章者の中には、三方向からの敵の銃撃にさらされながらも友軍負傷者の救出に向かい、被弾をしながらも救出に成功し帰って来た者、右腕を失いながら左腕一本で友軍のために戦い続け、任務を全うした者、友軍の撤退を助けるため、自らをおとりにした者など、歴戦の勇士の名が連なります。課された軍務に収まらず、敵の銃弾の嵐の中、自らの命を顧みず、仲間のために果敢に行動した兵士に贈られる軍人としての最高栄誉です。この話は、弊社の元米国陸軍軍曹のマネージャーから聞きました。彼は一言、「彼らは本当に勇敢な人たちだ。」と言いました。私も世の中には、真の勇気と胆力を持った人がいるものだ、と思いました。普段の私たちの生活の中で、自分の命を失うリスクを冒してまで他人を助けるような尊い行動をとる人を見ることはほぼありません。自分のため、お金のためではなく、純粋に仲間のために自らの犠牲も厭わないような人物、もしそのような上司、部下がいたならばどれだけ心強いだろうか、と思ったものです。かたや、この元軍曹は、普段口数は少なく、穏やかで、どちらかと言えば地味で目立たない人物です。仕事は出来ましたが、何か飛び抜けて才能がある訳でもありませんでした。何年も前にシニアスタッフに昇進した時も、特に目立って優秀というわけではなく、私は何時もそこそこの評価を彼にあげていました。Medal of Honor受章者とはほど遠い人物だと思っていました。


そこから数年間、更に彼を見てきました。彼は天才ではありませんが、常にコツコツと努力をし、成長を続けます。そして自分の部下が困った時は、彼は確実に手を差し伸べ、進むべき方向を示してあげます。お客様が困った時は、多少無理な話でも、最後まで我慢強く話を聞き、何とか役に立つよう、努力をします。私が困って彼に連絡すると、忙しい中でも彼は私のために時間を作り、一緒に仕事を創り上げてくれます。彼は自分の周りの人に対し、どんな時も何時も傍で手を差し伸べていたのです。特に大きな見返りがある訳でも無く、ただその時に "Thank you"と言われて終わるようなことなのに、その一つ一つを彼は私の隣で13年間、毎日積み重ねてきました。


人間が本質を見せるのは、何も戦場だけでは無いのでは無いか?そう視点を変えて考え始めてから、ようやく素直に物事が見えるようになりました。会計事務所は命を賭けた戦場では無いかも知れませんが、激務になることはあります。そんな中、思い返せば彼は常に自分よりも部下、自分よりもお客様、自分よりも上司のことを思い、日々仕事を続けてきました。その信念に一点の曇りも無く、かと言って誇張することも無く、ただ淡々と自分の責務を果たしてきました。13年彼と一緒に仕事をしてようやく、ああ、これがリーダーの本質か、と気付きました。そこが戦場であろうが職場であろうが、仲間の安全、成長を自らの使命と信じ行動を起こすこと、その本質に何も違いはありません。もしも私と彼が一緒に戦場に行って、私が被弾したとしたら、私は彼が命を賭けて助けに来ると確信しています。それは彼とこれまで一緒に様々なことを乗り越えてきた中で、彼が自己犠牲を厭わず、周りを助ける人間だと私は知っているからです。それがリーダーの本質であり、Medal of Honorの受章者は、それを戦場で目に見える形で発揮しただけに過ぎず、その行動を起こすポテンシャルを持っている人は、私たちの周りに存在しているのです。


たまたま私が彼の上司として13年間働いてきましたが、部下であるからリーダーではない、ということではありません。私は著名なリーダーばかりに気をとられて、自分の身近にこれだけ偉大なリーダーがいることに気づいていなかったのです。リーダーには多くの形がありますが、私はその根底に必要なものは、周りの人の成長を願い、チームの成功を願い、そこに責任を持ち、時には人生を賭けることすら厭わない覚悟なのでは無いか、と思い至りました。自分の責務に使命感を持ち、それに沿って一つ一つを積み重ねていくことこそが、周りの人を信頼せしめ、その人をリーダーたらしめるものだと思います。


自分の周りに、彼のようなリーダーがいることを誇りに思います。これはほんの一例ですが、他の部下たちも、素晴らしいマネージャー達の背中を見て、これから順調に成長していくことかと思います。私自身も、彼のように、人から信頼されるリーダーでなければならないと、常に自分を戒めています。