2024年6月14日

ビジネスを行う上では、債権を回収できずに損失を被ることは避けられないリスクだといえます。私生活においても、友人や親族に貸したお金の回収が不可能になることもあります。そこで問題となるのが、このような貸倒損失に対して税務上で恩恵を受けられるかどうかです。この論点はとても複雑ですが、基本的な原則を紹介させていただきます。
<1> 債権の実在性
第一のステップは、実際に債権が存在するかどうかです。債権が存在するには、債務者が、一定もしくは特定可能な金額を債権者に返済するという有効で法的拘束力のある義務がなければなりません。
家族間、会社とその株主といった関連当事者間の融資は特に精査され、偽装の贈与や配当、会社への出資ではなく、本当に融資であるかが確認されます。そのため、関連当事者間の融資を検討する際には、書面を作成し、妥当な利子を請求するなど、独立した企業間の融資と同様の扱いをすることで、実際に融資であると証明できるようにすることが重要です。
<2> 回収の可能性判定
第二に、債権が完全または部分的に回収不可能かどうかまたいつ回収不可能になったかを判断する必要があります。しかし、これらの判断は納税者の推測によるところもあり、実際の判断は難しいものとなります。納税者は、貸し倒れが確実ではないが、その可能性が高い場合に貸倒損失を主張することがあります。その場合、IRSは、翌年に返済される可能性があるため、その損失を時期尚早として却下する可能性があります。
一方で、明らかに回収が絶望的になるまで待った場合、IRSは前の課税年度においてその債権は既に回収不可能であったと主張し、その時点で損失を負担すべきだったと判断する可能性もあります。時効の問題が生じる可能性があるため、通常、債権が回収不可能であると合理的に主張できるようになった年にできるだけ早く損失を請求することをお勧めします。回収不可能性は基本的には全体の状況を鑑みて判断することとなりますが、破産申請などは強い証拠となります。
<3> 事業に関連する貸倒損失か事業以外の貸倒損失か
回収不可能債権の存在が確認できたら、その債権が事業上の債権であるのか、事業以外の債権であるかを判断する必要があります。多くの場合、税務上の取り扱いはこの区分により変化します。ご想像のとおり、事業上の貸倒損失とは、事業上の取引によって生じた債権が回収不可能になった際に生じます。法人として事業を行っている場合、一般的に法人が保有する債権はすべて事業債権となります。
一方で、事業債権に当てはまらない債権は非事業債権となります。非事業債権からの貸倒損失は、税務上で損失を計上する前に完全に回収不可能である必要がありますが、事業上の不良債権は部分的に回収不可能であることが確立できた場合に税務上で損失を計上することができます。さらに、非事業債権からの貸倒損失にはキャピタルロスの制限が適用されます。一方、事業上の貸倒損失は、他の収入に対して経常損失として全額控除できます。
冒頭で申し上げた通り、これはとても複雑なトピックです。上記の説明は、関連する税法の概要にすぎません。債権の貸し倒れにより税務に影響がでる懸念がある場合は、弊社までご連絡いただけますと幸いです。
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