リース会計

2022年1月21日 

米国財務会計基準審議会(FASB)は2016年2月にリース会計基準ASC842を公表し、新基準はほとんどの民間企業で2021年12月15日以降に始まる事業年度から適用されることになりました。この会計基準の変更は、企業の貸借対照表に影響を与え、会計処理の変更の必要性があるため、本ニュースレターではその内容をまとめてご紹介します。


■リースの定義

新しいリース会計基準では、リースを "対価と引き換えに、特定された有形固定資産(特定資産)の使用を一定期間支配する権利を譲渡する契約、または契約の一部 "と定義しています。

新会計基準ASC842では、リースはオペレーティングリースとファイナンスリースに分類されます。ファイナンスリースは、従来のキャピタルリースの分類に代わるもので、以下の5つの基準のいずれかに該当する場合にファイナンスリースに分類されます。


  1. リース期間終了時までに所有権が借手に移転している場合。

  2. 資産の購入オプションが提供され、それが実行されることが合理的に確実である場合。

  3. リース期間が当該資産の残存経済的耐用年数の大部分を占める場合。

  4. リース料の現在価値と賃借人が保証する残存価値の合計が、当該資産の公正な市場価格の実質的な全額を超えるか、または同等である場合。

  5. リース資産の専門性が高く、大幅な改造を行わなければ他の賃借人にとって有用でないものの場合。


■従来の会計方針との変更点

従来の会計基準とASC842の最も大きな変更点は、借手が資産を使用する権利である使用権資産(Right of use asset、以下 ROU)とリース期間中の金融債務であるリース負債を、リース開始時に貸借対照表で認識することを要求している点です。ファイナンスリースとは異なり、オペレーティングリースは従来、貸借対照表に計上されておりませんでしたが、今後は、借手側はROU資産とリース負債の両方を計算し、貸借対照表に計上する必要があります。


■新基準で発生するリース会計仕訳例

この2つのリースの新基準での会計処理の違いを説明するために、同じ条件の契約下でのオペレーティングリースとファイナンスリースで発生するイベント毎の仕訳と、金額の計算方法を以下に記載いたします。


- リース期間:3年(2022/1/1〜2024/12/31)

- 開始時に支払った初期直接費用:$8,000

- リース料の支払い :年次で$100,000、 $110,000、$115,000(合計$325,000)

- 支払時期:毎年末

- 割引率 5%


リース開始時および各年度末に計上する仕訳は以下のとおりです。次章以降これらの仕訳がどのように計算されるかをご説明します。


■リース開始時:ROU資産およびリース負債の計上

リース開始時に、まず ROU 資産とリース負債を計算し貸借対照表に計上します。リース負債は、将来のすべてのリース料($325,000)に割引率の5%を掛けて、該当リースの負債総額の現在価値($294,353)を計算します。新基準では、割引率としてリースに定義された利率を使用しなければなりません。そのようなレートが契約に記載されていない場合、借手は借手の借入レート(借手が同額を借入れた場合に支払う金利)またはリスクフリーレート(FRBが提供するもの)を使用することを選択できます。


ROU資産は、リース負債と初期直接費用および前払リース料の合計として計算されます。開始時に支払った初期直接費用は$8,000、リース負債は$294,353であるため、開始時に計上したROU資産は$302,353となります。初期費用が発生しなかった場合、ROU資産はリース負債$294,353と同額になります。


リース開始後は毎年度末にROU資産の償却費(Amortization Expense)およびリース負債に対する支払利息(Interest Expense)を計上し、それに応じてROU資産および、リース負債残高を調整する必要があります。オペレーティングリースもファイナンスリースも、ROU資産のリース期間中の償却費と、リース負債からの支払利息の計算を必要としますが、ファイナンスリースでは償却費と支払利息は別々に分類されなければならないのに対し、オペレーティングリースでは両者は単一の「リース費用(Lease Expense)」として計上できます(ただし、企業はこれらを分離することを選択することができます)。


またオペレーティングリースでは、旧基準と同様にリース期間にわたって定額でリース費用が計算されます。したがって、オペレーティングリースで毎年計上されるリース費用は、支払総額$333,000の3分の1である$110,000となります。これは、支払利息と償却費の合計額にも相当します。支払利息の計算は、リース負債残高(294,353ドル)に対して割引率(5%)を掛けて計算し、この例でいうと$14,718となります。


オペレーティングリースの償却費は、単純にリース費用と支払利息の差額として計算され、$96,282となります。当期のリース負債の減少額は、現金支払額($100,000)と支払利息($14,718)の差額として計上され、ROU 資産の減少額は、上記計算結果の$96,282となります。


ファイナンスリースでは、リース費用ではなく、償却費が定額で計算されます。したがって、ファイナンスリースにおいて毎年計上される償却費および借用権資産の調整額は $100,784 となり、これは開始時に計上された借用権資産($302,353)の 3 分の 1 となります。支払利息およびリース債務の調整額の計算は、オペレーティングリースと同じです。


2 年目および 3 年目の支払利息および償却費も1年目と同様に計算されます。


■貸借対照表上での残高の推移

以下の表は、上記で各年度に計上された仕訳から発生した各項目の増減を反映した資産・負債の残高をまとめたものです。

上記の通り、期首のROU資産とリース負債は同額で、計上される支払利息および償却費の合計もどちらのリースタイプでも同様となります。しかし、リース期間内の償却費とリース料総額の計算方法が異なるため、ある時点でのROU資産残高は2種類のリースで異なることになります。新リース基準の適用に際しては、リース期間全体のスケジュールを作成し、項目毎の計上必要額および残高を事前に把握することを強く推奨します。

ここまでの説明では、借手の変更点を中心に説明してきましたが、貸手の会計処理については、新基準でも大きな変更はありません。


最後に、新基準では借手が行使することが合理的に確実な資産の購入オプションを提供しない短期リース(12ヶ月以内)については、リース資産および負債を認識しないことを選択できます。新基準への移行に際しては、既存のリースを全てリストアップし、リースの内容や条件を把握した上で、新基準のガイドラインに沿った会計処理を行うことが必要となります。

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