top of page
TOPC Potentia

売上税のネクサス(州の課税権)の判定


2018年のWayfair最高裁判決により、事務所などの物理的拠点がなくても、売上税の申告義務を課すことが可能となりました。その結果、従来では売上税の申告義務がなかった州に対する思わぬ売上税の申告もれなどを指摘されるようなケースが増えてくるかと思われます。そこで今回のニュースレターでは、上記最高裁判決の概要、実務への影響、及び州の課税権を巡る近年の動向を簡単に説明したいと思います。



売上税のネクサス(州の課税権)の判定

売上税のネクサス(州の課税権)の判定については、従来、物理的存在・拠点(physical presence)が州内にある場合のみ、その州は売上税の課税権を行使できるとされていましたが、2018年のWayfair最高裁判決により、その考え方は否定され、ほとんどの州でネクサスの判定に経済的関連性(Economic nexus)という考え方が用いられるようになりました。

経済的関連性の要件の下では、州内に物理的存在・拠点がなくても、各州が設定した一定の金額を超える売上額や取引回数が州内で発生した場合にその州で売上税を課税されることになります。例えば、カリフォルニア州では、閾値(threshold)となる売上金額は$500,000であり、アリゾナ州では、2019年は$200,000、2020年は$150,000、2021年以降は$100,000となっています。ジョージア州での閾値は売上高$100,000または小売販売取引200件となっています。

州の税務当局は、法人又は事業主のビジネスに売上税の徴収と報告の義務があるかどうかを特定するために、法人又は事業主に対しネクサスに関する質問票を送付し、回答の返信を求める場合があります。その後、州の税務当局は提供された情報に基づいて法人又は事業主のビジネスがネクサスの要件を満たしているかどうかを調査・判断します。したがって、州の税務当局からの問い合わせには慎重かつ確実に回答することがリスクを軽減するために重要となります。自社がどの州にどれだけの売上額と売上取引数があるかなどを事前に確認し、必要に応じて、州の税務当局からの調査・判断を待たずに、自ら物理的存在・拠点を有しない州に売上税に関する登録を行い、売上税の徴収と報告を開始することをお勧めします。

前述の通り、2018年の最高裁判所の判決の結果を受けて、ほとんどの州がネクサスの判定に経済的関連性という考え方を取り入れていますが、適用については過去にさかのぼって遡及適用する立場は取っていません。一方、フロリダ州は、遡及的に適用する立場をとっています。まだ可決はされていないものの、経済的関連性をネクサスの判定に取り入れる立法が提案されており、近い将来可決されることが予想されます。そのため、フロリダ州で販売活動を行っているが売上税の徴収と報告を行ってこなかった企業はこれに備える必要があります。


Wayfair最高裁判決は、売上税についてのネクサスの判定にのみ影響を及ぼし、現時点では州所得税についてのネクサスの判定は公法86-272(「PL86-272」)の下で保護されています。したがって、州所得税については、Wayfair最高裁判決後もその州内に物理的存在・拠点又はそれに相当するものがなければ申告義務は課されないこととなっています。ただし、この州所得税の課税権から守ってくれるPL86-272は60年以上前に制定された法律であり、今日のクラウドテクノロジーにより、企業が60年前とは異なる営業活動が可能であることを考慮すると、事業活動の変化に伴い、今後税法も改正される可能性があります。有形動産の販売における物理的要件を削除するというWayfair事件の判決の成功は、州が所得税関連の物理的要件の削除に向けて積極的に取り組むきっかけとなる可能性があります。実際に、いくつかの州では、弊社のクライアントが売上税を申告した後、州の税務当局から所得税のネクサスの判定に関係するアンケートが送られてきています。ですので、多くのクライアントにネクサスのリスクが高まっていることを認識してもらいたいと思っています。今のところ、弊社はクライアントを州の税務当局のネクサスの認定による新たな申告義務から守ることに成功しています。州の税務当局から連絡があった場合、対応が遅れると事態が悪化する可能性がありますので、すぐに弊社までご連絡ください。

Comments


© 2021 TOPC Potentia All Rights Reserved

TRAIANGL-TOP-WHT.png
bottom of page