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遺産税と所得税のプランニング - 贈与税の控除について

2025年4月10日



遺産相続について考えるのは気が進まないかもしれませんが、ご家族の財政的な安定を守るためには、相続計画を立てることが大切です。その中でも広く活用され、多くの方が慎重に検討すべき手段の一つが「贈与」です。計画的に贈与を行うことで、遺産税の課税対象となる遺産の額を減らしながら、大切な資産を次世代に引き継ぐことができます。

「遺産税(Estate Tax)」とは、死亡時に財産を移転する権利に課される税金のことです。亡くなった方のことを「被相続人(decedent)」と呼びます。日本と違い、米国では亡くなった方の遺産(Estate)から、遺産税を払うこととなります。

2017年のTax Cuts and Jobs Actにより、2017年以降2026年までの間に適用される連邦遺産税および贈与税の基礎控除額、および世代飛ばし移転税(GST税)の免税額が5百万ドルから1千万ドルに倍増されました(インフレ調整前)。2025年における遺産税および贈与税の基礎控除額は13.99百万ドルとなっています。遺産税および贈与税の最高税率は40%です。

世代飛ばし移転税(GST税)と は、親を飛ばして孫などに財産を贈与・相続する際に課される税です。



生前贈与


受贈者が今すぐ資金が必要でない場合、生前に多額の贈与を行う主な目的は、将来の資産価値の上昇分を遺産税の課税対象から除外することです。ただし、この方法には一定のリスクも伴います。

その理由として、受贈者は贈与された資産を、贈与者が購入した際の取得価額のまま引き継ぐためです。一方、資産を相続した場合は、相続時の時価が取得価額となるため、贈与によって取得価額の引き上げ(ステップアップベース)を受ける機会を失い、将来的に譲渡所得税の負担が大きくなる可能性があります。

しかし、一般的な相続計画の考え方としては、資産の将来的な価値上昇分を課税対象となる遺産から除外することのメリットが、受贈者が資産を売却する際の税負担よりも大きいとされています。


贈与税の非課税枠


贈与税の非課税枠(annual exclusion amount)を利用することで、1人当たり年間一定額までの贈与が贈与税の課税対象外となり、将来の贈与税や遺産税の控除額を圧迫することもありません。2025年の年間贈与税非課税枠は19,000ドルです。

贈与できる財産の種類は柔軟で、19,000ドルの年間非課税枠の対象となる贈与には、現金や株式、債券などの資産に加え、生命保険のポリシーも含まれます。ただし、受贈者がその財産をすぐに所有または使用できる権利を持っていることが条件となります。

配偶者と贈与の分割(gift splitting)を行うことで、1人あたり年間最大38,000ドルまで非課税で贈与することが可能になります。特に、夫婦間で財産の保有額に差がある場合に有効な方法です。財産を多く持つ配偶者が贈与を行い、もう一方の配偶者がそれに同意することで、非課税枠を2倍に拡大できます。

ただし、この贈与分割を適用するには、両配偶者が米国の市民または居住者であること が条件となります。また、贈与税申告書(Gift Tax Return)で双方の同意を明示する必要があるため、たとえ贈与税が発生しなくても申告書の提出が必要 です。

この年間38,000ドルの非課税枠を活用することで、税負担を抑えながら効率的に家族の財産を移転することができます。

19,000ドルを超えない小額の贈与であっても、受贈者が引き継ぐ財産の取得価額は、贈与者が取得した時の価格となることに注意が必要です。そのため、受贈者が財産を売却する際には、贈与時の時価ではなく、贈与者の取得価格を基準に譲渡所得税が計算されます。

一方、相続によって財産を取得した場合は、相続時の時価が取得価額となるため、売却時の税負担が軽減される可能性があります。そのため、どの財産を贈与するかは慎重に選択することが重要です。


医療費および教育費の直接支払い


さらに、贈与税を負担することなく他者の財政的な安定を支援する方法として、医療費や教育費の直接支払い があります。これらの費用は、贈与者が受贈者に代わって直接 医療機関や教育機関へ支払う限り、無制限に非課税 で贈与することが可能です。

この場合、受益者が税務上の扶養親族である必要はありません。ただし、支払われた医療費が保険で補填される場合、その部分は非課税の対象とはなりません ので注意が必要です。



以上が、遺産(相続)プランニングにおける基本的な手法です。本資料が皆さまのお役に立てれば幸いです。もし実際の実行方法などについてご不明な点がございましたら、どうぞ遠慮なくTOPCの専門家までお問い合わせください。







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