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経営者の視点から ~イノベーターとフリーライダー~

更新日:2023年1月11日

2022年7月15日

10年以上前、会計、決済周りの全てのシステムをクラウドに上げました。社内での理解度も低かったため、一人で部屋にこもり、サーバー会社のエンジニア、時にはディレクターとも話をしながら、全世界から会計システム、決算書、その他必要な書類にアクセスできるようなシステムを構築しました。今でこそ当たり前のクラウド型システムですが、当時は類似のシステムを構築している会社がほぼ無く、日本でデモンストレーションをやれば参加者に驚嘆され、経営管理の契約が増えました。

しかし5年ほど前になると、クラウド・ネイティブのシステムが増えてきて、クラウド上で世界中からシステムへアクセスできることの普及が始まりました。構造的優位性が崩れて行くのが予見され、これからどう会社の舵取りをすべきか、眠れない夜を過ごすようになりました。仕事とはどうあるべきか。私たちが将来、どのように働いているべきか、そのビジョンをイメージしては消し、を何十回繰り返したか分かりません。そして4年前、弊社独自のソフトウェア開発に乗り出そう、と決断しました。様々な汎用品、ノーコードで作れるソフトウェア、その他を試してみたものの、結局どれも中途半端で、私たちが期待したように動かないことが分かったからです。当時、知っていたことは私たちが思い描くようなソフトウェアを作ることは、「理論的には可能」ということだけでした。しかし、私にはそれでも開発を進めるという選択肢しか考えられませんでした。ある部門の業務を、エクセルベースから自社開発ソフトウェアに移行したい旨を伝えると、社員たちから猛反対を受けました。「開発の経験はあるんですか」「資金はあるんですか」「動く保証はあるんですか」「リスクが高すぎる」「問題が起きたらどうするんですか」…反対する理由は、幾らでもありました。しかしそのような中一人だけ、計画に賛成し、一緒にプロトタイプを作ってくれるスタッフが現れました。二人で一緒に、時には夜遅くまでプログラムを作り、分からなくなったらプログラマーに連絡し、ようやくプロトタイプが完成しました。

しかしようやく出来た、と思ったのは束の間のことでした。基本的な動作はしてくれるものの、ちょっとでも条件が違えば、間違った答えを出してきます。そのバグを潰すためには、膨大な量のテストをこなす必要がありました。誰か手伝ってくれる人はいないか、と募った所、二人のスタッフがサポートしてくれることになりました。二人は、開発のことは一切分かりません。しかし、テストデータを入力したり、それが合っているか、彼女たちの目で確認することは出来ました。私は自分のオフィスから出て、ミーティングスペースの小さな机に座り、その後ろの会議用テーブルに彼女たちが座り、作業が始まりました。日本からインターンが来た時も、彼女たちは日本語が話せないながら、そのインターンに確認手法や、マニュアルの作り方を教えてくれました。初年度を、何とか新しいシステムで乗り切りました。私は手ごたえをつかんだと感じましたが、実際には私の時間、開発スタッフの時間、サポートスタッフの時間、外部システムエンジニアへの報酬など、初年度は大赤字、胸を張れる実績を残せませんでした。

猛反対したスタッフ達は、一人、また一人と「高野さんが無謀なことをやって会社をダメにしている」と言葉を残して辞めていきました。それでも私は、会社の未来は自分たちが働きたい環境を自分たちで作ることにかかっている、と信じ、開発を続けました。エンジニアを正式に雇用し、ITコンサル出身の者たちを社内に迎え、私の意図を理解してくれる、優秀な外部エンジニア会社とも契約しました。

開発を初めてから4年、騒動が起きてから3年。業務上のエラーは20%以下に減り、全体の時間も50%以下に削減され、大赤字だった部門が、今は単体で黒字を出せるまでに成長しました。内部の管理システムもやはり自前で開発し、各プロジェクトの収支が瞬時に把握できるようになりました。

今までやったことの無いことをやるのは、強烈な信念が必要になります。私は10年後、私たちがどのように働いていたいか、それを描き出してから逆算し、仕事を計画します。目に見える世界では無いので、証明をすることはできません。しかし、多忙な日々の業務に埋没することが簡単な中、未来の自分たちがあるべき姿をはっきりとさせておかなければ、進むべき道が分からなくなります。皆に進むべき方向を示し、そのためにはどのような苦難も乗り越えることができる人物、それをイノベーターと言います。信念、勇気、情熱、実行力、全てが揃って初めて未知のプロジェクトは成功します。

新しいものであればあるほど、周囲の理解を得るのは難しく、始めるには勇気と情熱が必要になります。急速に変わる世界で生き抜くためには、過去に捉われず、未来を見据えて動き出す勇気が必要であり、困難を乗り越えるには情熱が必要なのです。新しいプロジェクトほど、失敗する可能性も高まります。しかし、弊社は失敗を恐れず、たとえ失敗したとしても、失敗した者を笑いものにするようなこともしません。挑戦する勇気と情熱がある者は、きっと失敗から学べると信じているからです。そして弊社は、イノベーターをサポートした者たちも、イノベーター同様に評価します。私が新しいプロジェクトに挑戦していた時、一緒にミーティングスペースに座り、テストを手伝ってくれた二人がいたことが、どれだけ心強かったことでしょうか。誰しもが斬新なイノベーションを起こせる訳ではありません。しかし、サポーターになら誰でもなることが出来ます。挑戦を続ける者を傍観せず、自分が出来ることでサポートする。社員全員がその気構えであれば、きっと会社は成長し、サポートする各個人も確実に成長するでしょう。だから私たちは、挑戦を続け、時には失敗を受け入れ、イノベーションを起こせない者は、フリーライダー(傍観者)ではなく、サポーターになる、そんな会社でありたいと願っています。




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