常に明るく前向きに

2022年1月21日 


去る10月、父の七回忌がありました。コロナ禍の中、米国からの帰省はなりませんでしたが、弟たちがZoomで七回忌の様子、お坊様の読経の様子を見せてくれました。

読経の様子を見ながら、父の葬式を思い出しました。父は癌で亡くなったのですが、野球好きなオヤジで、毎週水曜日の午後と土曜日の午後の練習、地元で少年ソフトボールを30年以上教えていました。田舎だったので人数は少ないのですが、毎年5人~10人の生徒が入部したとしたら、30年で150人~300人ほどの教え子たちがいました。私も、帰郷した時は良く子供たちに交じって一緒に練習したものです。

葬式の日、300人ほどの人が集まりました。半分ほどは若く、父の教え子たちだったと思います。小学生の子たちから、立派に成長した社会人まで多くの教え子たちが集まってくれました。式前に見ていると、久々に会った人たちも多かったようで、「おぉ、久しぶり!元気か?」などと旧友との再会に笑顔になる人たちもいました。しかし片方では「しーっ。」と葬儀の場だからと自粛するように言う人たちもいました。それを見た時に、遺族代表としてスピーチで何を伝えるべきか、理解しました。

壇上でまず、父には稼いだお金を自分ではなく子供たちの大学進学のために使ってくれたことを感謝し、最敬礼しました。そして皆の方に向き直りました。「肉親を亡くすと言うことが、こんなに悲しいことだと、父を失って初めて分かりました。親子喧嘩もよくしたものですが、父がどれだけのことを子供たちに教え、残そうとしていたのかは、今になって痛いほどよく分かります。だから今日私は、父のことを思い出して悲しい時には泣いていると思います。皆さんも、父との思い出を振り返り、悲しい気持ちになり、泣く事もあると思います。」少しむせた後、続けました。「皆さんの中には、子供の頃一緒にソフトボールを練習した仲間たちと、数年ぶりに会う人たちもいると思います。久々に会うと、嬉しくなって笑顔になるものです。時には声を出して喜んでいるかも知れません。不謹慎だと心配される方もいるかも知れませんが、私は、それで良いと思います。皆さんは、父を思い出して悲しい時は泣けば良いと思います。しかし、子供の頃友人と遊んで面白かったこと、そんな昔話を思い出して楽しい時は笑えば良いと思います。私たちはこれから生きていかなければなりません。ずっと悲しみだけを背負って生きて行く訳にはいきません。葬儀という場ではありますが、父を通して多くの人たちがまた巡りあうことが出来たのです。ソフトボールを通じて子供たちが共に学び成長する場を作ってくれた父ですが、最後にまた皆さんが出会う場を作ってくれたのです。だから、楽しいことを思い出したら笑って良いのです。父はきっと、皆さんがまた出会い、笑顔になるのを喜んで見ていることかと思います。」

式の後、静かだった会場にはまた子供たちが駆け回る足音、すすり泣く声、両方が聞こえるようになりました。父は、最後に私たちに人の役に立つというのはどういうことなのかを教え、旅立って行きました。

もし私が父の葬儀で笑い合う若者たちを見た時に「葬儀の場で失礼なことだ。」と思ったなら、父の遺徳に気づくことは無かったでしょう。しかし、父はそのような状況でも、皆が喜ぶ姿を見て喜べる人間であることを人生をかけて教えてくれていました。

これから、仕事で、人生で、何度も困難に遭遇すると思います。また愛する人を失う日も来るでしょう。しかし父が最後に教えてくれたのは、例えどんなに辛く悲しく、どん底に感じるような状況においても、常にどこかに希望はあり、それを見て感じ取るのは自分次第だと言うことです。「常に明るく前向きに」、そう教えてくれた父に、再度の感謝を持った七回忌でした。




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