会計上の見積もりの役割

2025年9月11日

会計上の見積もりとは、不確実性を財務諸表に反映させ、企業の財務状況や業績を公正に示すために使用されます。会計上の見積もりには、将来の事象が財務結果に与える可能性について、その金額、時期、発生可能性を経営者が十分に判断することが求められます。複雑な項目については、経営者が信頼性の高い客観的な見積もりを作成するために、外部の専門家を起用する場合もあります。本稿では、会計上の見積もりが財務報告に果たす役割、見積もりのプロセス、および監査人が見積もりを評価する方法について説明します。

一般的な見積もりの種類

会計上の見積もりは財務報告のさまざまな側面に組み込まれており、主観的なデータと客観的なデータの両方に基づくことがあります。会計上の見積もりの例には以下が含まれます。

公正価値測定も会計上の一般的な見積もりのひとつです。公正価値で報告される可能性がある項目には、株式報酬、取得したのれん、無形資産、資産の減損などがあります。

社内での見積もりプロセス

会計上の見積もりを行う際、経営者は以下の要素を考慮すべきです。

• 過去データ

  過去の業績を分析することで、将来の動向や潜在的な問題を予測できます。また、過去の見積もりと実際の結果を比較することで、見積もりプロセスにおける問題点を特定し、改善につなげることができます。

• 現在の状況

  市場動向、規制の変更、技術革新などの外部要因は、会計上の見積もりに影響を与えます。

• 専門家の意見

  年金債務に関するアクチュアリー、資産評価のためのエンジニア、のれん減損に関する企業価値評価専門家など、さまざまな専門家との相談が必要になる場合があります。

また、経営者は新たな情報が入手できるたびに見積もりを見直し、必要に応じて修正する必要があります。継続的な評価は財務諸表の正確性を維持し、状況の変化を反映させるのに役立ちます。

透明性と一貫性も重要です。見積もりの方法や仮定は明確に開示すべきであり、時間の経過とともに一貫して適用されなければなりません。見積もり手法を変更する場合は、その理由を十分に説明し、財務諸表の注記で開示する必要があります。

監査プロセス

外部監査人は、監査の現場作業において会計上の見積もりに細心の注意を払います。彼らは、見積もりを作成するために用いられた方法やモデル、および裏付け資料を確認し、それらが特定の会計要件に適切であるかを評価します。加えて、監査人は見積もりプロセスに関する内部統制を確認し、その統制が誤りや操作を防止するのに十分かどうかを評価します。

入力データの検証では、監査人はデータの正確性、信頼性、関連性を確認し、独自に再計算を行います。また、異なる仮定や方法を適用したり、「感度分析」を実施したりして、経営者の見積もりが妥当かどうかを検証します。感度分析は、主要な仮定の変化が見積もりにどのような影響を与えるかを示し、重要な虚偽表示のリスクを評価する助けとなります。

さらに監査人は、財務諸表を歪めるおそれのある過度に楽観的または保守的な仮定など、経営者のバイアスの兆候を監視します。また、見積もりプロセスに関与する者の客観性も評価し、結果に影響を与える不当な影響や圧力がないことを確認します。

現場作業の最終段階では、貸借対照日後から監査報告書発行までの間に発生した事象を評価します。これらの後発事象は、会計上の見積もりの妥当性に関する追加証拠を提供する可能性があります。期間末時点で存在していた不確実性は、その後の状況の変化によってより明確になることがあります。

外部監査の重要性

会計上の見積もりは、複雑で主観的な分析に基づくことが多く、現代の不確実な市場環境では必ずしも正確でない場合があります。その結果、財務諸表の修正が必要になることもあります。また、財務目標や期待を達成するために見積もりを調整するなど、バイアスや操作のリスクも存在します。外部監査は、現在入手可能なデータに基づき、経営者の見積もりの妥当性を評価する上で重要な役割を果たします。