top of page

OBBBA:事業利息控除の制限について

2025年12月11日



ree

2025年7月4日、トランプ大統領は”One Big Beautiful Bill Act (OBBBA)”に署名しました。本法案には複数の税制改正が含まれており、本記事では内国歳入法163(j)条に基づく事業利息控除の制限に関する改正点についてご説明いたします。


背景と一般ルール

原則として、事業に関連して支払う利息や借入費用は、支払時または発生時の年度において損金算入(控除)することが認められます。しかし、事業利息 の控除額については、IRC Sec.163(j) により次の合計額が上限とされています。

  • その年度の 事業利息収入(business interest income)

  • その年度の 調整後課税所得(ATI: Adjusted Taxable Income)の30%

  • 小売顧客への販売またはリースを目的とする自動車等の仕入れのためのフロアプラン・ファイナンス利息(floor-plan financing interest)*


ATI(調整後課税所得)は、納税者の課税所得から以下を除外して計算されます。

  • 事業に帰属しない収益・損失・費用・控除

  • 事業利息収入および事業利息費用

  • IRC Sec.172 に基づく繰越欠損金控除(NOL)

  • IRC Sec.199A に基づく控除(QBI控除)**


* Floor plan financing interest

在庫として保有する自動車等を販売またはリース目的で取得するための借入金にかかる利息で、その在庫を担保としているものをいいます。ここでいう “motor vehicles(自動車等)” には、公道(道路・高速道路など)で人や物を運ぶ自己走行式の車両のほか、船舶、農業機械・設備なども含まれます。


** Code Sec.199A deduction(199A控除)

2017年のTCJAで導入された制度で、パススルー事業体からの Qualified Business Income(QBI)に対して最大20%の控除を認めるものです。


また場合によっては、納税者のATIにはSubpart F所得、GILTI(Global intangible low-taxed income)に係る所得、それらに関連するみなし外国税額控除のグロスアップ額、IRC Sec.956に基づく米国資産への投資として認識される所得などが含まれることもあります。


OBBBAによる主な改正ポイント

  1. ATI Base

    旧ルールのもとでは、ATI には減価償却費(depreciation)、償却費(amortization and depletion)に係る控除が含まれていました。言い換えると、ATI は会計上の EBIT(利息・税引前利益) に相当する概念に基づいていました。OBBBA のもとでは、ATI ベースは EBITDA に変更され、減価償却費等が ATI 計算時に課税所得に足し戻されます。その結果、ATI は従前より大きくなり、控除可能な事業利息の上限も増加します。

    この変更は、2024年以降に開始する事業年度 に適用され、遡及適用はされません。


  2. Foreign inclusion items in ATI

    この論点は、海外に子会社を有する企業に適用されます。2025年以降に開始する事業年度については、subpart F income および net controlled foreign corporation (CFC) tested income は ATI から除外されます。また、みなし外国税額控除(deemed paid foreign tax credits)に係る関連するグロスアップ額 も ATI から除外されます。さらに、特定の外国源泉配当に対する participation exemption deduction の一部 や、これらの所得算入に関連する foreign-derived intangible income (FDII) 控除および GILTI 控除 も ATI から除外されます。

    言い換えると、CFC に由来する所得と、それに関連する控除は、ATI の計算から事実上切り離されることになります。


  3. Floor-plan financing interest

    “Motor vehicle”の定義が拡大され、特定の牽引式トレーラーやキャンピングトレーラーが含まれるようになりました。その結果、これらのトレーラー・キャンパーの仕入れに関連するフロアプラン・ファイナンス利息についても、163(j)の枠組みの中で控除対象として扱うことができます。


  4. Coordination with interest capitalization provisions

    OBBBAのもとでは、Section 163(j)に基づく事業利息控除制限の適用手順は次のように整理されています。


a. 当期の事業利息を集計する。

(i)資本化の対象となりうる利息と、

(ii)上記以外の通常の事業利息


b. Section 163(j) に基づく事業利息控除限度額を計算する。


c. 算定された限度額を、まず「(i)資本化対象利息(capitalizable interest)」に充当する。

(i)資本化対象利息は、資産の取得原価に含められ減価償却を通じて控除されますが、Section 163(j)の目的(限度額の計算)上、この利息は事業利息として集計されます。

この時点で、Section 163(j) の限度額が(i)資本化対象利息の金額を下回る場合、その超過部分は資産の取得原価に含めることができず、資本化されない事業利息として翌期以降に繰り越されます。


d. 限度額にまだ余裕がある場合は、「(ii)上記以外の通常の事業利息」に充当する。

(i)資本化対象利息と(ii)通常の事業利息の合計が Section 163(j) の限度額を上回る場合、その超過した通常の事業利息は、将来年度に繰り越されます。

コメント


© 2021 TOPC Potentia All Rights Reserved

TRAIANGL-TOP-WHT.png

© 2023 TOPC Potentia All Rights Reserved

bottom of page