財務諸表の保証水準:あなたのビジネスに適した保証水準は?
- TOPC Potentia
- 3 日前
- 読了時間: 4分
更新日:2 日前
2025年7月17日

公認会計士(CPA)が提供する会計サービスには、いくつかの「保証水準」があります。これは、財務諸表がどれだけ信頼できるか―つまり、債権者や投資家などの利害関係者が、財務諸表が正確であり、米国会計基準(GAAP)またはその他の財務報告フレームワークに準拠していると、どの程度安心して判断できるか――を示すものです。保証水準が高くなるほど、CPAは財務諸表の評価に際して、より詳細かつ厳密な手続きを実施します。この記事では、それぞれの保証水準の違いや特徴をわかりやすく解説し、自社にとって最適なレベルを選ぶための手がかりを提供します。
■コンピレーション(Compilation)およびプリパレーション(Prepared Financial Statements)
コンピレーションは、重大な虚偽記載が存在しないこと、またはGAAPに準拠して修正が不要であることを保証するものではありません。ここでは、公認会計士が経営者から提供されたデータを、GAAP(または他のフレームワーク)に準拠した財務諸表の形式にまとめるだけです。注記情報やキャッシュフロー計算書は、任意で含めることができます。
AICPAの「会計レビュー業務基準書第21号(SSARS No. 21)」に基づき、コンピレーション・レポートは通常1段落で構成されますが、会社が特別目的フレームワーク(たとえば所得税基準や現金主義)を適用している場合には、追加の段落が必要となります。
保証を提供しないという点では、「プリパレーション(Prepared Financial Statements)」も同様です。ただし、プリパレーションにはCPAによる報告書の添付が不要であり、代わりにすべてのページに「この財務諸表には保証は提供されていません」といった免責文を記載する必要があります。これらは、以前よく用いられていた「マネジメント専用」の財務諸表の代替として利用されるケースが増えています(SSARS 21の導入により、従来のマネジメント用形式は廃止されました)。
■レビュー(Review)
レビューは、重大な虚偽記載が存在せず、GAAPに準拠しているという「限定的な保証」を提供します。これは、内部の財務データを出発点とし、会計士が分析的手続きを適用して、異常な項目や傾向を特定します。さらに、これらの異常に関して質問を行い、会計方針や手続きについて評価します。
レビュー済み財務諸表には、注記の開示とキャッシュフロー計算書の記載が必要です。ただし、内部統制の評価、実証的な検証手続きや確認作業、資産の実地確認などは要求されません。
SSARS 21では、CPAが重要な事項(開示済または未開示)に直面した場合、それらを関係者に伝えるために、レビュー報告書に「重要事項段落」や「その他の事項段落」を記載することを求めています。
■監査(Audit)
監査は、財務諸表が重大な虚偽記載がなく、GAAPに準拠しているという「合理的な保証」を提供します。
監査済み財務諸表の作成には多くの作業が伴います。分析的手続きや質問対応に加え、監査人は次のような作業を行います:
内部統制の評価
顧客や貸し手など第三者との情報照合
在庫の立ち会い確認
資産の実地確認
その他の実証的監査証拠の評価
公開会社は、証券取引委員会(SEC)により監査済み財務諸表の提出が義務付けられています。また、多くの利害関係者がいる大規模な非公開会社にも監査が要求されることがあります。
■比較表:財務報告における保証レベル

■不正の考慮
すべての企業で監査が必須というわけではありませんが、監査は効果的な不正対策になり得ます。ACFE(公認不正検査士協会)が発行した「2024年 国際不正調査報告書」によると、いかなる保証水準であっても重大な虚偽記載や不正を完全に防ぐことはできませんが、外部監査を受けていた企業は、受けていなかった企業と比べて、不正による損失が52%も少なく、詐欺継続期間は50%も短いとの結果が出ています。
外部監査は、不正の発見に寄与するだけでなく、外部者の監視があるという意識を不正行為者に持たせ、抑止効果もあるとされています。
■適切な保証レベルの選択
どの保証レベルが適しているかを判断する際には、以下の3つの要素を考慮してください:
自社のビジネスの複雑さとリスクプロファイル
社内人材のGAAPに準拠した正確な財務報告能力
ステークホルダー(利害関係者)の期待
一般に、大企業はより高度な財務・会計部門を持っていますが、取引の複雑さや外部資金への依存度が高いため、監査が必要とされることが多いです。
■変更のタイミング
企業の経営者や管理者は、状況に応じて保証レベルの変更を判断することがあります。たとえば、成長企業が将来の上場や有利な資金調達を目指して、レビューから監査にアップグレードするケースもあれば、安定した中堅企業が監査からレビューにダウングレードし、代わりに四半期ごとにハイリスクな勘定科目について合意された手続きをCPAに依頼するような場合もあります。現時点の状況に適した保証レベルについては、CPAと相談しながら決定するのがよいでしょう。
Comments