2022年11月9日
プロジェクトに携わる際、そのプロジェクトの成果を明確にし、社内で共有、そしてお客様に分かりやすく伝えることはスタッフに伝えることは企業として最も重要な仕事の一つかと思います。成果の基準は業種によって色々あると思いますが、弊社では大きくは量的な成果基準と質的な成果基準とに分け、その中でプロジェクトの成果をどう評価するかを指針として持っています。今回は弊社なりのプロジェクトの成果基準を皆様と共有したいと思います。
量的な成果基準
量的な成果基準は、毎日必要な情報をトラッキングさえしていれば、比較的客観的にデータを取ることが出来ます。会社は、データ取得の仕組み作りと運用、社員はその仕組みを活用し、プロジェクトの成果を正しく把握することが必要になります。弊社はその軸として、次の3つを挙げています。
〇 プロジェクト毎の売上を明確にする。
まず何より、プロジェクト毎の売上がどれだけあるものかを明確にする必要があります。売上が明確になることにより、掛けることが出来る工数も明確になりますし、収益性も担保されます。予算編成の段階で、請求体系を明確にしておくことで、お客様との請求トラブルを可能な限り回避することは大事な要件です。
〇 プロジェクトに要した時間を明確にする。
弊社の場合、プロジェクトに要した時間は、各自が毎日記録し、それを管理部門、それに上長がチェックしています。弊社ではPhase 5と呼ばれるサマリーミーティングの際、予算で確保された時間と実際に要した時間を比べ、プロジェクトが上手く行った理由、上手く行かなかった理由を明確にし、プロジェクトチームで共有、大きな事案の際は社内全体で共有する仕組みにしています。
〇 時間当たりの利益率を明確にする。
売上が高ければ良いのは確かですが、利益が立たなければ元も子もありません。また、業務をこなすスピードと質は職階によって大きく変わりますので、総時間数だけを見ては意味がありません。弊社の場合、例えばシニアマネージャーの時間当たり請求単価$300に対し、スタッフは$150に設定し、掛かった時間数を掛け合わせます。例えば同じ2時間でも、シニアマネージャーであれば$600の成果を出す事が求められるのに対し、スタッフは$300だけとなり、仮にお客様に$500請求した場合、前者は予算を下回りますが、後者は予算を上回った、と言えます。
文章で書くと簡単なことですが、弊社内部では年間に数百のプロジェクトがあり、数十が同時並行で走っており、各プロジェクトの収益性を人力で把握するには膨大な時間が掛かってしまいます。色々なソフトウェアも試してみたのですが、十分なものが無く、結果「コックピット・パネル」と呼ばれるソフトウェアを自社開発し、毎週プロジェクトの進捗を把握し、完了後にはサマリーミーティングで収益性を共有しています。また、弊社は業種柄、生産高、原価計算などは出て来ませんが、製造業では業態に則した明確な指標が必要になるでしょう。
質的な成果基準
質的な成果基準は、会社の文化に密接に関わるものです。例えば、会計事務所の中にも、弊社のように革新的な考え方や開発を好む事務所もあれば、伝統的な手法を重んじる事務所もあるでしょう。弊社の場合、仕事に対する哲学をTOPC Axisと言う座標軸にまとめ、社員の評価自体、その座標軸にて行われることになります。プロジェクト単体を考えても、それは例外ではありません。皆様にもその多くを「経営者の視点から」で共有していますが、簡潔に書くと下記の通りです。
〇 技術軸:
基本に忠実に業務を遂行出来ているか。
なぜなぜにより、物事の本質的な問題点を把握できているか。
複雑に見える課題をシンプルに理解できる単位まで分解し、課題全体を理解できているか。
バイアスをかけず、公正に判断を下しているか。
仮説、実行、検証、調整が滞りなく行われているか。
直観を生み出すまで、日々努力を重ねているか。
〇 サービス軸:
お客様が唸るほどのサービスを提供できているか。
十分にお客様を知り、期待値を合わせられているか。
問題が発生した時に、暫定対応、恒久対応、横展開が出来ているか。また、不満を信頼に変える努力ができているか。
ただ業務を遂行するだけでなく、部下、お客様、或いは上司に対しても、教育者であれているか。
〇 チーム軸:
他責をせず、自分の課題として捉えているか。
スピルバーグをし、周りと共同作業ができているか。
イノベーターであり続けているか。
ミーティングを学びの場として提供・参加できているか。
大義を持ち、公平であるか。
〇 オーナーシップ軸:
オーナーシップを持ち、与えられた条件の中で最大のパフォーマンスを発揮できているか。
批判を具体的建設案と一緒に提示する能力があるか。
〇 営業軸:
お客様をファンにできているか。
お客様も、弊社スタッフも幸せになれているか。
有する知識を発信出来ているか。
〇 時間軸:
スケジューリングのオーナーシップを持っているか、プラニングは十分か。
案件を定義し、時間価値を高めているか。
予算を上回る品質を提供できているか。
会社により、文化的背景が違いますから、評価基準が違って来るのは当たり前のことです。量的基準、質的基準のどちらかに偏っては公平な評価は出来ません。量的基準においては基準軸を定め、数字を正しく把握する仕組みを会社内部で整えること、質的基準においては会社の文化を明確に反映した座標軸を持ち、公正に評価していくこと、その両方が成果を明確にするためには不可欠です。
その文化を企業内に浸透させるため、また評価を速やかに伝えるため、プロジェクトのみならず、社員の評価自体も弊社は毎月行い社員の行動改善につなげています。米国でも半年に一度程度評価が行われるのが一般的ですが、半年前の行動を人はあまり覚えていないものですし、半年近くも間違った行動を取り続ける可能性すらあります。タイムリーなフィードバックがもらえると、社員の間でも月次評価は好評で、今では半年間も評価を行っていなかった時代のことが信じられないくらいです。
完璧な成果基準、評価軸というのは存在し得ないものかも知れませんが、それを追求していく姿勢こそが、経営者に求められるものなのでしょう。
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