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Stick to the Basics - 基本を外さない



会計事務所においてIT開発を推し進める私が言うと不思議に聞こえるかも知れませんが、私は「普通の仕事を当たり前にやる」ことこそが、プロフェッショナルとして一番大事なことだと思っています。それは、自分が「当たり前のことは詰まらない」と思い、手を抜き、自分の仕事を自分で詰まらなくしていた過去を猛烈に反省しているからです。


私は会計事務所の監査部門でキャリアをスタートさせました。正直、会計士の仕事とは何なのか、と言うことへの理解は低く、ただスーツを着てネクタイを締めて、アメリカで活躍するかっこいいビジネスマンになるんだ!と思っていました。マンハッタンの事務所にさっそうとスーツで出勤し、頭がキレてバリバリ仕事をこなし、時には飛行機で日本に出張、そんなビジネスマンを夢描いていました。

入社後、意気揚々と仕事に向かったのですが、待っていたのは、請求書を突き合せたり、在庫を点検しに行ったりと、いわゆる「下っ端の仕事」でした。引き出しから請求書を引っ張り出しては帳簿と見比べっこしたり…あれ?これって「かっこ良くない」…と思いながら仕事をしていました。毎日毎日、同じような下積みの仕事を続けました。ある会社での監査では、一人で50個を超える銀行勘定を合わせました。会計に馴染みの無い方に分かりやすく説明すると、50個の銀行通帳が正しいかどうか、ひたすら見て行くような、単調で、地味な作業の繰り返しです。こんなことのために、大学時代真面目に勉強して、難関を突破して就職したのかな…と不満に思いました。実際、私だけでは無く、多くの同僚や先輩方が同じような疑問を抱え、不満を口にしていました。


しかし、一見同じような作業を繰り返すにつれ、あることに気づきました。まったく同じであるべき作業内容なのですが、会社会社で、作業の流れ、資料のまとめ方などが違っているのです。銀行口座調整表というベーシックなものですら、要点を綺麗にまとめている会社、数字を取り合えず羅列している会社。誤字脱字の多い会社、色々ありました。同様に先輩方のフォーマットも見て行きました。すると、やはり優秀だと言われる先輩のものは、見事に各フォーマットが統一され、どの仕事を見ても、後輩にでもすぐに理解できる内容になっています。かたや、不平不満をしょっちゅうこぼしている先輩のものは、やっつけで、心ここにあらず、と言ったフォーマットになっていました。当たり前な「下っ端の仕事」ですら、優秀な人とそうで無い人が残したものは、明らかに違ったのです。


それから、繰り返し基礎資料を見て行くうちに、良い仕事の共通点は、「目的が明確にされ」「手段が明示され」「実務内容を残し」「結論をきちんとまとめてある」ことを悟りました。ごくごく当たり前のことかも知れません。しかし、その「当たり前」のことがなぜか結構な頻度で抜けているのです。そして、その「当たり前」さえ抑えていれば、エラーが起きる確率も、非常に低いことに気づきました。それに気づいてからは、一見単純に見える作業でも、その本質を見抜き、どう仕事をまとめるか、考えて仕事をするようになりました。考えて仕事をするようになると、仕事が楽しくなって行きました。やっている仕事の内容は変わりませんでした。ただ、その仕事の意義と目的を理解し、以前より少しでも良いものを、次の人が見て納得できる資料を作る努力をすることで、単調に見える作業でさえ、楽しくなっていったのです。そして、仕事が楽しくなると、段々と周りから認められるようになっていきました。


「突然注目される選手と言うのが毎年出てくるが、それは「突然」才能が開花した訳ではなく、実はその前に数年間の努力がある。」広島やメジャーリーグで活躍された、黒田博樹さんの言葉です。黒田さんは、「大事なのは、試合で見せる素晴らしいプレーでは無く、単調で、一見詰まらない基礎練習をどれだけ真剣にこなすことが出来るかなんだ。」と仰います。結局、陰で見えない基礎練習こそが、業界を問わず、何よりも大事なのです。


ビジネスで言えば、例えばiPhoneを作るような、革命的な仕事は誰にでも出来ることではありません、しかし、基本に忠実に、確実に仕事をこなす。これは誰にでも、努力によって可能になることです。私たちは、天才にはなれないかも知れませんが、自分の才能を最大限に引き出す努力を積むことは出来ます。


最後に懺悔しますが、私は仕事においても、過去に何度も失敗をしました。そして犯した失敗は、「基本を外した」時にだけ発生しました。お客様にご迷惑をお掛けし、平謝りをしたこともあります。何度も苦い経験をしたからこそ、基本に忠実であることの大切さを知っているのです。弊社にもまだ、基本を外すことの怖さを知らない社員たちもいると思います。だからこそ、弊社でも技術に関する座標軸で第一に来るのが、「Stick to the Basics - 基本を外さない」ことなのです。


社員の失敗の責任は、社長にあります。社長自ら、基本に忠実であることを心掛け、これからも実直に仕事をしていきたいと思います。これからも、どうぞよろしくお願いします。

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