top of page

経営者の視点から ~小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり~

2025年11月13日



ree

「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」という言葉は、もともとは中国の古典、菜根譚が原典だそうですが、個人的には、京セラの名誉会長、稲盛和夫氏からこの言葉を聞きました。耳に痛い厳しい言葉こそ、実は自分の成長に必要なことだったり、逆に優しさに感じることが、時には自分を甘やかす結果になってしまう、という戒めの言葉です。

 

これが実際の業務においてどのように考えれば良いか、弊社の「Beer Bash」で出たエピソードをもとに、「小善は大悪に似たり」と「大善は非情に似たり」の二つのテーマに分けてご紹介したいと思います。

 

小善は大悪に似たり

  • あるスタッフは、以前営業職として働いていた際、クライアントの要望を安易に受け入れすぎた失敗談を話してくれました。物理的に困難な納期の要望に対し、「無理ではないだろうか」と思いながらも、お客様を喜ばすために、また相手の執拗な要求から逃げたいという思いから、「できます」と安請け合いしてしまったのです。しかし、その納期は現実には不可能で、納品自体は行ったものの、結果として製品の品質は低下し、大量の返品を招きました。一時的に納品を喜んでくれた顧客も、最終的には不満を抱く結果となり、無理を強いられた工場チームもモチベーションを失ってしまいました。

  • 別のスタッフは、以前の職場で「それ、俺がやっとくよ」と優しく声をかけ、自らどんどん仕事を引き受けてくれる上司がいたと言います。当初は「上司自ら頑張ってくれる良い職場だ」と思っていたそうです。しかし数年後、別の会社で働く友人たちが、厳しい上司のもとで着実に経験を積み、成長していく姿を見て焦りを感じました。そして、環境を変えるべく渡米を決断し、弊社(TOPC)で働くことになります。その結果、最初の1年で、以前の職場の3年分に相当する経験を積むことができたそうです。

 

大善は非情に似たり

  • あるスタッフは、新卒で銀行に就職しました。現在も銀行は規則など厳しいと思いますが、当時はもっと厳しかったことでしょう。上司から厳しい指導を受け、当初は同僚や友人たちによく不満を漏らしていたそうです。しかし、仕事に慣れていくにつれ、その指導から仕事のあり方と価値、そしてプロフェッショナルとしての振る舞いを学んでいることに気づき始めました。さらに続けるうちに、チームとして働く意義までも深く理解できるようになったとのことです。

  • また別のスタッフは、クライアントへ書類を送った際、一部送付漏れした書類があったことが発覚した際、広島から山口まで、片道2時間かけて、その届け物を運ばされた話を共有してくれました。車中で「なぜわざわざこんなことを…」と不満に思いながらオフィスに戻ると、上司がにこっと「これで、もう同じ間違いはせんじゃろ?」と彼女に笑いかけたそうです。この一言で、スタッフは自分がなぜそれをさせられたのか、上司の真意に気づいたそうです。

 

これらのエピソード全体を通して気づくのは、「小善」と「大善」の違いが、受け取り手に良い結果をもたらすまでの「時間軸の違い」にあるということです。たとえば、納期通りに納品された製品を見た顧客は、最初は喜んだでしょう。また、自分の仕事を上司が引き受けてくれた時、その日の仕事が減り、スタッフは一時的に楽になったことと思います。しかし、前者のケースでは後にクレームが発生して信頼関係が壊れ、後者のケースではスタッフの成長が阻害されてしまっています。これらは短絡的な善意が長期的な問題に転じた例です。

 

逆に、銀行に就職したスタッフは、短期間では苦しかったでしょうし、山口まで届け物をしたスタッフも、4時間もの運転に不満を感じたことでしょう。しかし、長期的な視野に立てば、銀行のスタッフは仕事の価値観とチームワークを学び、山口へ届け物をしたスタッフは、郵便物を送る際にダブルチェック・トリプルチェックを徹底するようになり、同じミスを二度としないよう気をつけるようになったはずです。

 

いずれにせよ、短期的には苦痛を伴ったとしても、正道を踏むことこそが、長期的には成長への一番の近道なのです。

 

今回、各スタッフの話を聞いて私が特に嬉しく感じたのは、「各スタッフが、話を素直に聞き、それが何を意味するかを判断する能力を備えている」と思えたことです。普通、厳しいことを言われると、誰もが嫌な気持ちになったり、面倒だと感じたりするものです。しかし、弊社のスタッフは、その厳しさを短期的な感情として捉えるのではなく、長期的に自分やチーム、会社の成長にどうつながるのかを理解しています。

 

真に成長を願ってくれる人の行いは、時に厳しさが伴うこと。それを理解し、努力できる人は、そこから成長することが出来ます。短期的な優しさに甘えるのではなく、長期的な視点を持ち、自分と周りの人々の成長につながる努力を続ける、これが出来る人間であり続けて欲しい、と心から思った次第でした。

 





コメント


© 2021 TOPC Potentia All Rights Reserved

TRAIANGL-TOP-WHT.png

© 2023 TOPC Potentia All Rights Reserved

bottom of page