2022年9月16日
私は経営者の友人たちと時折話をすることがあります。今年の話ですが、その一人が不意に「高野さん、もし余命はあと一か月です、と宣告されたら、どうしますか?」と聞かれました。ある方は、「家族を大切にしたいので、家族と一緒に色々な所に行きたいですね。」と答えられました。私は、「生活自体、特に何も変わらないでしょうね。」と答えました。
確かに最後の時間を家族と過ごしたい気持ちはあります。しかし、もしあと一か月しか時間が残されていないとしたら、まず何よりも社員たちの将来を確かなものにしてあげたいと思います。そのためには、二番手、三番手の社員たちに今後この会社を運営していくにはどうすれば良いのかを明確に伝えておく必要があります。私の頭の中にあるビジョン、製品の設計図なども仕上げて渡しておかなければなりません。お客様を回る必要もあるでしょうし、他に一緒に仕事をさせて頂いている企業様も回って社員たちがこれからも安心して働ける環境を作っておかなければなりません。私は、TOPC Potentiaはこれからも成長を続ける、大きな可能性を秘めた会社だと確信しています。しかし、もし二番手、三番手の社員たちが経営に自信が無いと言ったならば、社員たちの再就職先を見つけるために奔走することでしょう。その時は、最後の一人に至るまで私が先頭に立って確実に信頼できる会社様にお願いして行くことになると思います。
社員たちにはこれからも成長を続け、より社会に貢献し、より良い生活を送れるようになって欲しいと願っています。それは、私自身の子供たちの成長、社会貢献、そしてより良い生活を願う気持ちとなんら変わりはありません。そこに差がある必要も感じません。
私は人の価値は、「その人が人生でどれだけのものを得たかではなく、どれだけのものを与えたかで決まる」と信じています。一か月という限られた時間の中では私がやりたいことに時間を使うよりも、私を必要とする人たちのために時間を使うべきだと感じます。それは誰かに言われたからそう思うのではなく、それが自分の生き方だと信じているからです。
会社は経営者で決まります。それは、経営者が描くビジョンと信念によって会社が動いて行くからです。「世界一働きたい会計事務所をつくる」ことが私のビジョンであり、世界一社員が生き生きと働き、成長できる環境をつくりたいと願っています。そして、成長した社員たちがお客様の成長を願い、仕事をし、そのお客様が更に成長を続ける。そんな成長の輪が、弊社が掲げるミッション「人と、会社を強くする」に通じるのです。自分の力を自分のためだけに使うのでは無く、自分の力を周りの人たちのために使い、社会全体の成長につなげていく、そういう思いが込められています。
会社は経営者で決まるからこそ、経営者の信念や生き方、社員やお客様を思う気持ちというものが何よりも大事だと思うのです。実際に気持ちは中々伝わらないものです。しかし、こうだと決めたら経営者はその信念を曲げず真っすぐに社員、お客様、そしてすべての人々に伝わるまで伝え続け、社会全体の進歩発展に貢献していく気持ちを最後の瞬間まで貫き通す、そんな覚悟と勇気が必要なのだと思います。
未来の働き方を描き出す独創性、正しいと思えば誰の意見でも聞き入れる公正さ、それを遂行する勇気。若い頃はそれらを併せ持つ経営者の下で働きたいと思っていました。中々出会わないものだな…と自分の不遇を嘆きながら過ごしている間に、どういう因果か私自身が経営者となりました。最初のうちは経営とはどうしていくものかまったく分かりませんでした。年月を経て少しずつ形が見えてきましたが、実際にはまだ私は若い頃に憧れた経営者像からはほど遠い所にいます。それを自覚しながらも少しでもその姿に近づきたいと願い、一歩ずつただ努力を続けています。
このような経営者として未熟な私の下に20人の社員が集まってくれている訳です。全員が私が掲げるミッションとビジョンを信じて集まってくれています。もし私に一か月時間があるのなら、私を信じてくれた人たちに最後の瞬間まで自分が出来ることをしてあげたい、そう思います。それが私がこの会社の経営者である意義であり、私が信じるオーナーシップなのです。
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