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経営者の視点から ~誰にも負けない努力をする~

2025年7月17日



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10年以上前、自宅はシアトル、事務所はロサンゼルスにあったのですが、月に一度、ロサンゼルスからシアトルに帰る飛行機を、一旦サンノゼで降りて、シリコンバレー界隈のエンジニア、ベンチャーキャピタリスト、弁護士、大学教授の方々などと毎月のように集まって飲んで語り合っていた時期がありました。


そのような折、ソフトバンクの孫正義氏の入社式のスピーチを聞いた方がいいよ、と先輩に言われ、飛行機の中でビデオを観たことがあります。ご存知かも知れませんが、孫氏は高校を中退して渡米、アメリカの高校を飛び級して大学入学、発明、大学教授の協力を仰いでの販売、起業と、通常ではとても考えられないようなことを若い時からやり遂げていました。私は、何だこれは、とスケールの大きさに衝撃を受けました。私も単身アメリカに留学し、勉強をして良い会社に入り、後に起業をしていました。自分なりに、常に頑張って来たつもりでいました。しかし、私の人生と多少リンクする所はあるものの、スケールがあまりにも違いました。「自分は頑張ってきたんだ」と思い込んでいた、自分の思い上がりが恥ずかしいやら悔しいやらで、隣の席の人が心配して声をかけてくれるほど、飛行機の中でボロボロと涙を流して泣いていました。


10年ほど前、京セラの名誉会長、稲盛和夫氏の話を聞きました。稲盛さんから最初に聞いた言葉が、「誰にも負けない努力をする」です。穏やかな口調の中、若き日の話を語るのを聞きました。ブラウン管に使うU字ケルシマを開発するために鍋窯を持ち込んで会社に泊まり込み、毎日粉塵まみれで格闘していた話、みかん箱の上に立って、「原町一、中京一、京都一、日本一の会社になるんや!」と社員たちを鼓舞した話、一つ一つの話に、その志の高さと、目標を実現する意志の強さと努力に、また打ちのめされていました。


話し口も性格も全然違う二人ですが、私はずっと、稲盛さん、孫さんに負けない努力が出来ないことを恥ずかしく思っていました。誰にも負けない努力とは言っても、稲盛さんや孫さんに、勝てる訳がない、無理だ、という思いから、会社では、「自分に負けない努力をしろ」ということはあっても、「誰にも負けない努力をしろ」と言ったことがありません。自分が出来ていないのに社員に言うことは、何だか嘘をついているようで、後ろめたい気持ちがあったからです。


自分の中で、ようやく答えが見つかったのは、今年「自分に負けない努力をする」の議題で、Beer Bashでやった後でした。高いゴールを設定する、日々の努力を積み重ねる、努力自体を楽しむ、挫折しそうな時は仲間を作る、結果にこだわる…。 言葉としては完璧です。皆誠実な人柄なので、きっとコツコツと、努力を重ねて成長するのだろうな、と思いました。しかし、各スタッフから、本当に自分の限界を超えたいと思う気迫、燃える炎のような闘志を感じたかと言えば、そのようなことはありませんでした。淡々と話すスタッフの話を聞きながら、「これで、本当に世間の荒波に飲まれることなく、やっていけるんか…」と正直不安になりました。


そこに至って、やっと気づきました。 誰にも負けない努力が必要なのは、「自分に負けない努力」としてどれだけ綺麗ごとを並べた所で、現実に私たちは競争社会に生きていて、他を凌駕する実力を持たなければ淘汰されるのは必至だからです。何も現代に限ったことではありません。戦国時代など、気を抜けば命が取られる時代もありました。人間社会に限らず、自然界においても適者生存、生き延びるために努力を続けない個体はいません。


ビジネスにおいても、役に立たないと目された企業は淘汰されていきます。「自分に負けない努力」で、昨日より少し出来ることが増えたとしても、他の企業が自社より伸び続けていけば、そのうち淘汰されてしまうのは避けられないものなのです。


社内を見渡した時、みんなコツコツと頑張ってくれていることに気づきます。確かに、自分に負けない努力を、自分なりにやってくれていると思います。しかし、実際には、この社員たちだけでは、おそらくこれからの時代の波に飲み込まれてしまうだろう、と感じます。


組織のリーダーが、常に誰にも負けない努力を続けなければならないのは、そういう社員たちが荒波に飲まれることなく、確実にその能力を社会に貢献するための環境をつくるためなのです。視座を高く持ち、未来を見据え、成功には何が必要なのかを考え、そしてその未来に、社員たちを連れていくのが社長の仕事です。誠実で素晴らしい社員たちが安心して暮らせる会社をつくるのは、社長が本気で誰にも負けない努力を続けることが出来るかどうかにかかっています。それを、私のような才能に恵まれない普通の人がやり遂げようと思えば、人生を賭けてそこに挑む闘志が必要なのでは無いでしょうか。ただ自分に負けないだけではなく、自分より先に行く者がいれば、何としてでもその者を追い越す努力をする闘志と意志の強さ、それが経営者に求められる、第一の資質なのだとようやく気づきました。そして、会社という組織においては、少なくとも各マネジメントは、その闘志を持っていなければなりません。企業が成長する過程において、マネジメントが一丸となって成長への強い意志と闘志を持っていれば、その企業は確実に強い会社となります。弊社はまだまだ、その段階に来ておりませんが、まずは私がそうあるよう、そして次代のリーダーたちがそう成長出来るよう、努力を続ける所存です。





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