経営者の視点から ~もうダメだと思った時が仕事の始まり~
- TOPC Potentia
- 8月15日
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2025年8月15日

仕事に限らず、受験やスポーツの試合など、その過程で「もうダメだ」と思ったことは何度もあるのでは無いでしょうか。私の友人知人の中にも、名経営者と言える方々がいますが、やはりほぼ全員と言っていいほど、常人では諦めてしまうような状況を乗り越えています。Beer Bashでこの議題を話し合ったのですが、それを踏まえて、私が「もうダメだ」と思った時にどう考え、どう行動するのか、一度残しておきたいと思います。
頭と心を切り離す
試練に直面した時、「嫌だな」「やりたくないな」「何で私だけに」など、心に負の感情が生じることがあります。この負の感情に心が向き始めると、ストレスを抱えるようになります。感性的に心で悩むのではなく、試練を解決すべき課題と捉え、対応策を頭で考えることにだけ集中します。頭と心を意図的に切り離すトレーニングを繰り返し行うと、その作業に慣れてくるのですが、その時の心構えというのも重要になってきます。その心構えについては、下のまとめをご参考にしてください。
なぜなぜを行う
弊社のアクシスにもなっているのですが、課題を「目的と手段」「質と量」「コスト・ベネフィット」「出来ること・出来ないこと」などの観点から考え抜くことで、やるべきことが明確になってきます。自分が出来ることを確実に行い、小さな成功を積み重ねていくことで、次第にチーム全体に自信が出て来るようになります。
技術的なことを説明すれば、大きくこの二つなのですが、実際には、世の中のほとんどの人は、大きな壁を乗り越えることを諦めてしまうものです。起業で言えば、10年もすれば8割以上の企業は潰れると言われますが、それは経営者になろうという気概の持ち主ですら、直面した大きな壁を、8割以上乗り越えることが出来なかったことを意味しています。本当の困難に直面した時にどうしてそれを乗り越えることが出来ないのかは、技術論以上に心の在り方に理由があります。
例えば、会社を経営する際、なぜなぜをどれだけやっても、成功できる確証を得られないことは多々あります。普通の会社員の場合、出来るか出来ないか自信を持てない仕事が自分に振られた時、「こんなの、無理ですよ。出来る訳が無いじゃないですか」と上司に文句を言います。上司に文句を言う勇気がない人は、飲みながら「自分がどれだけ割に合わない仕事をやらされているか」と、同僚に愚痴を言います。私はそれを見るたびに、本当に恵まれた人たちだなあ、と思います。リーダーと言うのは、文句を言う相手がいません。登山に例えれば、もやが掛かって先が見えない厳しい登山道を、先頭に立って登るようなものです。地図と、コンパスを睨みながら、自分たちの能力を信じ、部下がどれだけ文句を言おうとも、不安に思おうとも、チームを鼓舞し、チームを率いてひたすら登山を続けます。自分の見立てが悪ければ、崖から転がり落ちるように会社は潰れてしまいます。実際に、そうやって多くの企業が潰れていきます。
この時の、地図に当たるのが、経営計画書や、プロジェクトプラニングのような業務に直接関連する計画書です。現在実行可能なギリギリの領域に、未来に実行可能になるであろう試算まで入れて、計画を作り上げます。計画自体は、なぜなぜを自分や、チーム全体で行っていくことで、精度を上げていくことが出来ます。
もう一つ、コンパスに当たるのは、経営者と、会社の心の指針です。弊社では、それがTOPC Axisと呼ばれる会社の行動指針にあたります。Axisと言うのは、座標軸の英語なのですが、心の中で座標軸を持てば、大きく間違った方向に進むことがなくなります。私たちがそれを座標軸と呼び、単なる行動指針と呼んでいないのは、それが私たちの哲学に基づく行動指針であるからです。企業内に座標軸があるのかどうか、そしてそれが企業内で共有されて皆が同じ方向に進めるのかが、とても大事なことです。努力の方向性が正しい方向に向いていれば、努力すればするほど、良い結果が伴います。逆に各自がてんでバラバラに行動していたのでは、努力が結集せず、思ったような結果を得ることが出来ません。だから、会社の中に地図とコンパス、両方が存在することが、とても大事なことなのです。
ここまではご理解頂けたと思いますが、経営者の中でも、8割以上の方は、経営哲学・座標軸を会社内に浸透させることが出来ず、挫折していきます。大きな要因は二つあり、一つは「とんでもない労力を必要とするから」であり、もう一つは「それが、いつ浸透して、どれくらい効果を発揮するものなのか、分からないから」です。人は、思い立てば1か月や2か月は、努力を継続することが出来ます。しかし、まったく結果が出ない努力を、1年、2年と継続する人はほとんどいません。この過程で、多くの経営者がふるいにかけられて行きます。
弊社にまだAxisが無い時、それを作成し、浸透させるまでの過程で私がずっと心に留めていた言葉が二つあります。京セラの名誉会長、稲盛さんから学んだ言葉なのですが、「動機善なりや、私心なかりしか」と、「至誠の感ずるところ、天地もこれがために動く」です。私の考えが、本当に正しいことなのか、仲間の成長を思ってのことなのか、自分の欲望を満たすためではないのか、常に考えていました。そして、それが本当に心からそう思えるのであれば、どれだけ伝えるのがヘタな人であったとしても、いつかその思いが伝わる日が来ると信じて行動を続けたのです。例え自分に何のメリットが無かったとしても、それが仲間のためになると思えば、どれだけの苦労を伴ったとしても、仮にそれが失敗に終わったとしても、それはそれで清々しいじゃないか、と当時は思っていました。
経営において、短期間で結果が出ないことは往々にしてあります。結果が出ない時、多くの経営者は戸惑い、諦めてしまいます。優れた経営者というのは、誰もが諦めそうな時、自分の心のコンパスに従って、本気の努力を続けることが出来る人たちです。自分のためだけではなく、仲間全体の成長のために、本気で努力を続けることが出来れば、短期間での成果はなくても、長い時間の中で、その人の生き方自体が企業の文化となり、いつしかそこで働く人たちが変わっていることに気づく日がきます。経営者には上司はいませんが、その上には常に天があります。迷った時には自分の欲望に従うのでではなく、天に向かって自分がどうあるべきかを問いただして行けば、自ずと進むべき道は見えてきます。もうダメだと思った時に、社員が努力の方向性を見失わないように、私はAxisをつくり、その浸透に努めてきました。それが私が信じる正しい道であり、弊社の在り方だと思うからです。これからも、その道から外れることの無いよう、真摯に、一生懸命に進みたいと思います。




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